『新編 飯田蛇笏全句集』(角川書店、1985年)
を少しずつ読み進めてきましたが、
ようやく最晩年の『椿花集』に入りまして、
アッと目をみはる句に出合いました。
それは、
雙燕のもつれたかみて槻の風
もつれながら空の高みへ向かう二羽の燕の姿から、
蛇笏の四男にして、
蛇笏を継ぎ俳誌「雲母」を主宰した
飯田龍太の有名な俳句を思い出したからです。
春の鳶寄りわかれては高みつつ
蛇笏のは燕、息子・龍太のは鳶ですが、
近寄ったり離れたりしながら
空の高みへせりあがっていく様子が似ています。
龍太はふたつの句についてどこかで書いているのかもしれませんが、
残念ながら、
わたしは今のところ目にしていません。
父の俳句を踏まえて作ったのか、
いつのまにか刷り込まれていて眼前の景にふれたとき、
ふいに言葉が生まれてきたのか、
その辺のところを知りたい気がします。
言葉のインプットとアウトプットを考えるとき、
とても参考になる気がします。
いずれにしても、
蛇笏の俳句を読んでいると、
彼がいかに
和漢の古典に親しんでいたかがじわりと見えてきますが、
龍太は、
まず父である蛇笏を仰ぎ見、
親近しつつさらに、
古典の世界へいざなわれていったのか
と想像されます。
・放物線飛び去る春の雀かな 野衾