沈丁花は

 

帰宅の道のさいごの難関、
心臓破りの階段を上ってハアハア息をしていたら、
ふいにいい香りが鼻をついた。
沈丁花。
きょろきょろ見渡したが、
夜ということもあってかそれらしき花は見つからない。
しかしまちがいなく沈丁花だ。
コロナで戦々恐々としているうちにも、
季節は確実にめぐっている。
わたしが使っている
『合本俳句歳時記第三版』(角川書店編)
には、
「和名の由来は沈香と丁字の香りをあわせ持つからとも、
香りは沈香で花の形は丁字であるからともいわれる」
とある。
中国原産で、漢名は瑞香。
そういわれてみると、たしかに沈香のかおりに似ている。
きのうの朝、
鶯の声をことし初めて聴いた。

 

・沈丁花闇の深さを量りかね  野衾