夢であいましょう

 

・逆立てる羽に埋もる冬の鳩

 

山の上の高校に向かっていた。
とうに卒業しているはずなのに、
なんの用事か。
K君も歩いている。
前の職場でいっしょだったK君がぼくの高校になんの用事だろう。
家からだったのか、
途中から合流したのか、
九十八で亡くなった祖父までが…。
三人そろって、
お堀端にあるパチンコ店に入った。
祖父とK君の間に挟まれ椅子に腰かけた。
千円、また千円。
二分とかからない。
この台は遊ばせてもくれない。
おもしろくない。
席を立った。
K君もダメなようだ。
祖父ももちろんダメだったが、
立ち上がろうとはせず、
わたしから少しおカネを借りようとする気配なので、
仕方なく、
財布から二千円をだして祖父に渡した。
「ありがとう」と言って、
祖父は自分の財布をだし、
渡した二千円をしまい込むのだった。
そのとき、
祖父の財布には
五千円札が一枚しのばせてあった。
五千円あるのなら、
なにもぼくから借りなくてもいいのにと思ったが、
そのことは言わずにパチンコ店の外へ出た。
祖父の性格を考えた。
わたしが貸した二千円をなくし、
五千円札にまで手を付けたら、
祖父は家に帰れなくなってしまう。
いや、そこまで使うことはないだろう。
わからない。
きょうはいいことあるだろうか。
曇っていくようなのだ。

 

・冬の空どこ吹く風のこころかな  野衾