エレベーター

 

・乾きたる音のどこまで枯野かな

 

原稿読みで疲れての帰り、
だれもいない廊下を
重く歩いてエレベーターへ向かうと、
閉まりかけているドアが
視界に入り、
急ごうか
という気持ちが
ほんの一瞬もたげたものの、
いいや、
で、
ドタドタとドアの前まで。
と。
当然閉まっているものと思い込んでいたドアが開いたままです。
「あ。どうもありがとう」
小学校三年生ぐらいでしょうか、
いっていて四年生ほどの女の子が
エレベーターの中でボタンを押し続けていました。
ドアが閉まっていっしょに一階へ。
「公文に行ってきたの?」
「はい」
一階についてドアが開くと、
女の子はまたボタンを押しています。
「ありがとう」
先に出て、
会館を後にし。
外はとっぷりと暮れています。

 

・日向ぼこ伸びする猫の背中かな  野衾