ちゅらんちゅらん

 

・忘れても忘れた底のちゅらんちゅらん

音も文も人柄も好きな細野晴臣の本が出たので、
さっそく読んでみた。
『細野晴臣 とまっていた時計がまたうごきはじめた』
読んで細野さんをますます好きになった。
この本は、
五年前に出された『細野晴臣 分福茶釜』
と同様のインタビュー集。
聞き手は同じ鈴木惣一朗。
驚いたのは、細野さんがときどき、
地震警報の音の聴き直しているということ。
そのくだりを引用します。

――震災直後はテレビは結構ご覧になりましたか? つまり被災地の映像とかですけど。
実はいまでもあの津波の映像を繰り返し観てるの。
――えっ? 録画した映像を観てるんですか?
うん。あと、地震警報のあの「ちゅらんちゅらん」って音を聴きたくなるの。
――聴きたくなる?
うん。なんかね、被災地の映像を観たり、地震警報の音を聴いたりすると意識がばっと変わるの。
――なんのためにそうしてるんですか?
このまま元に戻っちゃって、なにごとも起きなかったような意識に戻っちゃいそうだから、そうすることで、自分を刺激してるんだと思う。

細野さんは、
本ではエッセイが好きで
これまでいろいろ読んできたそうですが、
このごろエッセイがつまらないと言う。
なぜつまらないのか。
つまらなく感じるのか。
細野さんの意識の底流になにかあると読んでいて感じるのだが、
それがなんなのか…。
また聞き手の鈴木惣一朗がたびたび、
オリジナルの曲を作ってくださいよと促すも、
細野さんなんとなくのらりくらりで、
オリジナルよりも
カバー曲を演るほうが今は面白いらしい。
いっぱいいい曲があるのに、
オリジナルオリジナルと拘るのが可笑しいと。
その、もやもや、うごうご、
うごめいている感じがとても信頼できるのだ。
ちなみにNHKで使用される
緊急地震速報のチャイム音「ちゅらんちゅらん」を開発したのは、
工学者の伊福部達(いふくべ・とおる)。
管弦楽曲、歌曲、『ゴジラ』などの映画音楽を多く残した
伊福部昭(いふくべ・あきら)の甥に当たる。
叔父の伊福部昭が作曲した交響曲「シンフォニア・タプカーラ」
の第三楽章冒頭部分をモチーフに、
甥の伊福部達が開発したものだという。

さて写真集『石巻』について、
詩人の佐々木幹郎さんがすばらしい書評を書いてくださいました。
コチラです。

・一月の夕日に黒き富士の嶺  野衾