さてと

 

・しんしんと白くなりゆく記憶かな

二〇一五年。
明けましておめでとうございます。
ふるさと秋田では、
本を読み、テレビを見、食事を作り、酒を飲み、
本を読み、テレビを見、食事を作り、酒を飲み、
また本を読み、テレビを見、食事を作り、酒を飲み、
一日は温泉に浸かり、
一日は親戚の家にお邪魔しご馳走になり、
まあまあゆっくりのんびりできたいい正月でした。
紅白歌合戦の大晦日は、
さすがに九時就寝とはいきませんでしたが、
それ以外はおおむね九時前には
電気毛布の床に入り、
朝の四時か五時には起き出します。
長田弘さんの詩にあるごとく、
このリズムが
いわばふるさとで、
ふるさと秋田に帰ろうが
旅先だろうが、
どこでだろうが、
ふるさとを携行しているようなものです。
中学高校の頃は、
目覚まし時計のほかに
ひとつ置いて隣りの部屋から
母が声をかけてくれたものでしたが、
今は、
目覚まし時計がなくても
四時前にはだいたい目を覚ます。
丹前を着込みストーブのそばで本を読む。
火の温みがじんわり体に沁みてくる。
やがて畳を踏む足音がする。
「おはよう」
「おはよう」
腰の曲がった母がゆっくり目の前を通り過ぎます。

・年賀状深読みしすぎ疲れけり  野衾