青空

 

通勤途中、坂の中腹で立ち止まり空を仰ぎ見た
後ろから来ていた人がすぐ脇を、通り過ぎていった
笑われているような気もしたけれど
かまわずに
周囲の高い建物のてっぺんが、視界から外れるぐらい首を反らせた…

小学生のとき、ブランコの鎖につかまり体を振り上げ
上りと下りの空白の時間、涙のあわいに空を見た
冬の朝、おろしたての防寒具を身にまとい
ちょっと眩しいようなこころで
輝く時間に飛び出したときにも

何の気がかりのない日がなくなってからどれぐらい経つだろう
青空の青は変わらずにそこにある
わたしが死んでもきっと、そこにありつづける
いやいや
生まれるずっと前から、さらに
生まれるずっとずっと後から
ずっとずっと
そこにあったのだ

海はちょっぴり空が妬ましい
いま青空の声を聴く
この経験の空は、名づけることがむずかしい
だれにとってもの空
わたしだけの空
青空をきょう見た
むぐらもちが沈黙を貪る、この場と構造の特殊から眺める
青空なのだ