人情に触れたくなると

 

・コンビニでケーキ五個にて三百円

季節のせいでもあるのか、
はたまた加齢のせいなのか、
世の中がつまらないなぁ、
寂しいなぁ、
てなことが脳裏をかすめる、
だけならまだしも、
胸に沁みてくることが間々ありまして。
そんなときは、
寅さんを観ます。
全巻は持っていませんが、
DVDを二十本ほど持っていますから、
とっかえひっかえ。
回を重ねて観ているので、
ストーリーはとっくに知っており、
じゃあなんで観るのといえば、
子どもが好きな絵本を見る類かもしれません。
細かいところに発見があります。
間とか、言い回しとか、目の表情とか。
あと何度聴いても痺れる
寅さんのあの啖呵売。
「物の始まりが一ならば国の始まりが大和の国、 島の始まりが淡路島、
泥棒の始まりが石川の五右衛門なら、助平の始まりが……」
山田監督が惚れたのも頷けます。
どの回でもいいですが、
おしえられるのは、
誰に限らず
一人ひとりは寂しくて、
寄り添って生きているなぁということ。
それが胸を打ちます。
例えばリリーと寅さん。
浅丘ルリ子演じるリリーにやさしい言葉をかけるときの寅さんの声質ったら…。
そりゃ泣いちゃうよ。
天才俳優・渥美清の至芸の一つではないでしょうか。
私事ながら、
今年、
なんとも落ち込んだ時期があり、
土日をかけ、
八本観たことがありました。
それはそれで
目と肉体は疲れましたけれど、
疲れとともにこころが仏、
いやほどけ、
なんとか砦に居つづけることができました。

・蟻でなしケーキセットに人だかり  野衾