なんでもないもの

 

・天高し何もする気が起きぬなり

ランボーは、
「僕はあらゆる職業が嫌いだ」と言ったそうですが、
わたしは、
あらゆる職業に就けないのでないかと、
小さいころ疑っていました。
具体的にイメージできませんでした。
父は百姓で、
今も米を作っていますから、
父のようになりたい
的なことも、
思わないわけではありませんでしたが、
それはそれで
大変な仕事だなぁと思ったりもし、
ほかになんかあるかなぁ、
ないかなぁ、
とか。
だいたいお金っていうのがピンと来ませんでした。
大学でマルクスを読んだら、
ははぁ、
幻想みたいなものね、
と思ってそのまま。
ともかく、
いま編集者、出版人です。
面白いし、
割とまじめに取り組んできたつもりですが、
ちょっと初期化したくなる
ときがありまして、
若い頃遠くから眺めていた詩を
今頃になって読むのは、
そんなこころが
駆動力になっているのかもしれません。
光線が気になりますので、
このごろは、
なんでもないものに憧れます。

・秋風や恋は遥かの四十年  野衾