飯島耕一先生

 

・息殺し夜を深くす虫の声

詩人の飯島耕一先生が亡くなられ、
もうすぐ一年が経ちます。
昨年の十月十四日に先生は亡くなられました。
先生から
多くの自著をいただきながら、
全部を読んでいたわけではありませんでした。
先生がわたしに
種をまいて下さったとでもいうか、
遅まきながら、
このごろとみに
詩が面白くなってきて、
そうしたら、
先生の本のどのページを開いても、
そばで親しくお話を拝聴しているぐあいで、
書かれてあることが、
詩も評論もエッセイも
こころにすっと入ってきます。
例えばイロニーと諧謔を、
先生はこういうふうに考えておられたか、
と納得してみたり。
ときどき本の中に短冊とは別の
短い手紙が入ってい、
端正な文字がひっそりと佇んでいます。
しばらく本を読む手を休め、
先生の字に眺め入ることしばし。
本を読むことは著者との対話である
とは、
字面では知っていましたが、
先生の本を読んでいくうちに、
そのことを今、
新たに発見しました。
生きてあることは騒がしく、
騒がしく、
一晩眠ったあとの思考が澄むように、
亡くなったひとの言葉が
澄んで聞こえてくるようです。

・しんしんと昼の景色の露に入る  野衾