いのちのリレー

 

・朝焼けが鰯雲にうつっています

新井奥邃の名を当時
あらいおうすい と正しく読んだのは
横浜国立大学の中国文学の教授ただ一人
当時
というのは
著作集を出すまえのこと
完結したあと
詩人の飯島耕一さんに一セットお贈りした
凄まじい勢いで読んでくださり
雑誌に論考を発表された…

いのちのリレー 連綿と
古代からの灯を絶やすことなく
身近のひとに渡す 渡す
以外に 何の生きる意味がある

静謐晴朗なる
肉のうねり捩れに淫し
傷つけ 傷つけられ
恥ずべき誤魔化しは 棚に上げ
誤魔化されたを 憤り
それでも誠意だけは失くすまい
と糞バッタ 誠意?
誠意などどこに ある
指が細くなり
筋張った 指の間から
硬化した誠意の欠片 キラキラと剥がれ落ち
剥がれ落ち
風に早くも飛ばされ ひるがえった

いのちのリレー
平成気圏の中へ手を伸ばす
平静神息を いのちに宿し
新しいいのちへ と
つなぎますよう に
ZYPRESSENと賢治がいう
不言の言の
激情秘めたるツィプレッセン

・鰯雲辿り辿りて富士の峰  野衾