奇跡の4分30秒

 邪気ありて己つ知らずや寒空の下
 サラ・マクラクランの『サーフィシング』に入っている「エンジェル」に滂沱の涙を流したことはすでにここに書いたが、その後も、毎朝出社前に聴き、良い気に浸っている。
 ときどきはまだ目の奥がジーンとなることもあるけれど、最初に聴いたときほどではない。落ち着いて聴けるようになった。
 4分30秒。終わると、ふーと溜め息が出る。大げさに言えば、3秒速くても遅くても歌の印象は変わってしまうかと思われる。それほど完璧で奇跡の4分30秒なのだ。
 サンタナとやったライブのも聴き、それはそれでお客さんの大歓声に応えるようにして歌い素晴らしいし、爽やかでもあるが、次元が違う。
『サーフィシング』の録音のときの彼女の状態が特別のものだったのではないかと想像する。なんともやさしく慈愛に充ちた声だ。ゆっくり、たっぷりした声に導かれ、一段一段階段を上っていき、今自分が生きている場所を上から静かに眺めているような気分になる。そういう場所でしか生きられない人間なのだと納得させられるような、でも、諦めないでと励まされる。奇跡と呼びたくなる所以だ。
 毒吐いて一夜眠るも寒の雨

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