セザール・ビロトー

 

・原稿に向い鼻奥つんとせり

「セザール・ビロトー」はバルザックの小説。
バルザックの小説は、
ひとつひとつ独立していながら、
人物再登場の手法により、
全体として膨大な
「人間喜劇」を構成していますから、
あ! この人物、
ここでこんなことをしていたのか、
まるで極上の人間模様と
襞の境を目の当たりにするような、
眩暈でも起こしそうな、
そんな錯覚にとらわれます。
バルザックを読む度、
人間こんな感じ
人生はこんな感じ
等々と思い、
驕り高ぶってはいけないこと、
身の程を知ること
の大切さを思い知らされます。
セザール・ビロトーは香料商。
まじめにこつこつ仕事をしてきた人だったのに、
勲章を受章し好い気になり、
身の丈以上の舞踏会を催したあたりから、
歯車が狂い始める。
カネ、カネ、カネ、
カネの力の恐ろしさを
これでもかと思い知らされる
のもバルザックです。

・境内を雪ぎすすぎて桜かな  野衾