養生訓

 日本史の教科書に、貝原益軒『養生訓』と、地の文よりも太い文字で確か記されていた。重要な固有名詞で、試験にも出やすいということだったのだろう。そういうキーワードのところだけ緑のボールペンで塗りつぶし、緑の下敷きを当て、教科書を問題集としても使ったりしていた。そんなふうにして覚えたものは、名前しか知らないのに、「養生訓? ああ、貝原益軒ね。接して漏らさずの人でしょ」などと口にし、おのれの愚かさを人前でさらすことになりかねない。
 針灸の治療院の待合室で、たまたま講談社学術文庫の『養生訓』(現代語訳)を見つけ、ぱらぱら頁をめくってみた。ななめ読みするつもりが、つい一行一行読んでいた。こういうことを書いている本だったのかと新鮮な驚きがあった。いのちの根本は、自分のものではなく、天からの授かり物なのだから、生をやしない、人に尽くし、天寿を全うすべきだという考えも、なるほどと思った。

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