机上

 

・遠くより柿の届きていただきぬ

整理整頓と子どものころから言われてきましたが、
それほど得意なわけではなく、
右のものを左へ、
左のものを右へ
移動させて済ませています。
移動させているうちに、
もはや必要のないものが混じっていることに気づき、
その場合はポイと捨て。
いつの頃からか、
仕事を終えて退社するとき、
机の上を片付け、
書類は耳をそろえトントンと重ねて置き、
机上をティッシュで拭くようになりました。
手の油脂分がけっこう残っていたりするのですね。
こうすると、
その日一日の仕事のはかどりを
意識せずとも反省させられ、
また、
翌日仕事に向かうときの気持ちがちがいます。
いわば初期化された状態で仕事に向かえる。
高校の教師をしていたとき、
先輩のK先生の机の上はいつもきれいでした。
教師の机の上というのは
あまり整理がゆきとどかず、
物であふれているのがふつう。
ところが、
K先生の机の上だけは
いつもきれいに整理され、
職員室の広い空間の中で
そこだけシーンと静まり。
いわば静謐の気に充たされていた。
何度も目にしました。
やがてK先生は定年前に職場を辞され、
独学で習得した韓国語を生かし、
かの地の大学院へ入学し、
そこで韓国の仏教を学び、
韓国仏教の古典中の古典・
釈譜詳節の日本語訳を完成させました。
K先生は、
河瀬幸夫先生です。

・とうろりと身不知柿の甘さかな  野衾