悪い人と歩けば

 

・坂道を上り下りの月見かな

瞽女と書いて「ごぜ」
瞽は「めしい」
瞽女とは、
目の見えない女の旅芸人。
三味線を弾き弾き門付け芸を生業としていました。
写真家・橋本照嵩の写真集に傑作『瞽女』があります。
平成十七年に百五歳で亡くなった瞽女で、
小林ハルさんという人がいました。
生後三か月で失明し、
五歳から瞽女になるための訓練を受けたそうです。
生前に
テレビで紹介されたこともありましたから、
憶えておられる方もあるでしょう。
目の見えない女の旅芸人ですから、
苦労もあった、
というよりも、
苦労の連続ではなかったでしょうか。
目が見えませんから、
見知らぬ土地を一人で歩くわけにはいきません。
目が見える人の苦労もありますが、
目が見えない人の苦労は計り知れず。
小林さんは言ったそうです。
「いい人と歩けば祭り、悪い人と歩けば修行」
百パーセントいい人もいなければ、
百パーセント悪い人もいない、
などと言ってしまっては、
糞も味噌もいっしょになってしまいます。
百パーセントは措いといて、
いい人、悪い人はやはりいます。
「いい人と歩けば祭り、悪い人と歩けば修行」
この言葉も
覚えていていい言葉だと思います。

・秋刀魚食ひぽかんと我や此処に在り  野衾