気になるカーテン越しの会話
ある日の鍼灸治療院にて
「まだ、いたむ?」
「だいぶよくなりましたけど…」
「ここは?」
「すこし…」
「こっちは?」
「あ」
「いたい?」
「いたいです」
「あとは?」
「こつばんのところが、ちょっと…」
「ここ?」
「いっ、い…」
「ごめんごめん。いたかった? ちょっと、ぬいでみて」
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「ねむれる? きのうはなんじにねたの?」
「じゅうにじまえにとこについたんですけど、たぶん、ねたのはいちじすぎだったとおもいます。それで、よじはんごろにめがさめて、あとは、ねむれませんでした」
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「ねむれるようにしたからね。きょうは、はやめにとこについて、ゆっくりやすんでください」
「はい。ありがとうございます」
右から来た音を、ぼくは、ただ左へ受け流すこともできず、ベッドに身を横たえたまま全身耳怪獣と化していた。