愛染かつら

 

・弥次喜多と伊勢へ行きたし秋の風

父に『昭和の大ヒット大全集』上を買いました。
CD三枚組み。
正月、持って帰ろうと思います。
父も母も歌と仕事が趣味のような人なので、
きっと喜んでくれるでしょう。
父が叔父といっしょに
愛知県鍋田干拓地の工事のため
出稼ぎに行ったとき流行っていたという
こまどり姉妹の「ソーラン渡り鳥」も入っています。
昭和三十六年につくられた歌ですから、
わたしはまだ四歳。
青っ洟を垂らしていた頃です。
子どものころ、
こまどり姉妹のお姉さんのほうが好きだったことを
この日記にすでに書いた気がします。
一枚目のCDには「旅の夜風」が入っています。
これを聴くたびに胸がきゅんとなります。
CDの「旅の夜風」は
霧島昇と九条万里子が歌っていますが、
わたしが聴いて知っているのは、
おそらく
神戸一郎と青山和子が歌ったものだろうと思います。
なぜなら、
まだ家に来て間もないはずの
白黒テレビに釘付けになるようにして
「愛染かつら」のテレビドラマを見ていた記憶があり、
その主題歌「旅の夜風」を歌ったのが
神戸一郎と青山和子だからです。
長内美那子(おさないみなこ)演じる
高石かつ枝に
夢中になったものでした。
洟垂らしの小学生にドラマのストーリーなど
わかろうはずもありません。
が、
高石かつ枝を演じる長内さんが
なんだか、
とってもかわいそうだった。
かわいそうでかわいそうで
なんとかしてあげたかった。
性の昏さも甘さもまだ知らないころのこと。
それよりも、
切ない気持ちのほうを
先に知ったということでしょう。
ませたガキでした。

・蟹江にてこまどり姉妹を父の秋  野衾