ラッキー!

 

・光瀾に洗ひ流さる秋となる

信号が青に変ったのに、
ふと思い立ち
横断歩道を渡らずに、
回れ右して建物の階段を上りました。
このとき午後六時四二分。
階段を上りきり、
恐る恐るドアを開けたら、
いつものソファに客がが一人もいない。
ラッキー!
ドアを大きく開け一歩中へはいると、
リクライニング状態の客が一人、
顔を剃られてあと数分でおしまいのようでした。
ラッキー!
愚痴をこぼしたくなることもありましたから、
ラッキーが続くことはうれしく、
厄落としになります。
前の人が代金を払って退室。
「どうぞー」
「はい。いつものようにカットだけお願いします」
「はい。わかりました」
……………
「はーい。お疲れ様でしたー」
一二〇〇円を払ってドアを開け階段を下り、
さっきの交差点に向かいます。
信号はまだ青にならず。
このとき午後六時五八分四〇秒。

・良寛の筆空中に秋の風  野衾