新井奥邃著作集

 

・秋なれば初版句集の色も濃し

ムージルの『特性のない男』が終りましたので、
つぎは『新井奥邃著作集』
これは再読でなく三度目。
「再読無益なり」と語った奥邃先生は、
天上で呆れているかも知れません。
正確に言えば、
初めては、
著作集でなく『奥邃廣録』でした。
前の出版社に勤めて間もないころですから、
今から二十数年前。
自分で企画した『奥邃廣録』の復刻版を
一冊一冊むさぼるように読みました。
難しいのに、
なんだか体が震えるようで。
難しさが気にならない、
とでも言ったらいいでしょうか。
不思議な貴重な有難い時間。
ほかのどんな本ともちがってい、
面白くて、
腑に落ちたところを
隠れるようにして手帳に書き留め、
読み耽っているうちに
赤羽の駅を乗り過ごしたり…。
春風社を起こしてからは『新井奥邃著作集』
編集しながら何度も、
読むというよりは、
眼で触れ、さわり、撫で、起こし。
今度はふつうに読みます。
視力がだんだん衰えてきましたから、
本文の字の大きさを
12ポイントにしておいてよかった!
後に自分が読むことを考えて
そうしたわけではありませんが、
けっきょく自分のためにもなりました。
さてどんな感想が湧いてくるか、
わくわくします。

・映画はね映画館で観るぞ好き  野衾