きりぎりす

 

・まとはりて振り向く空の夏の蝶

通勤途中の電車内で読む本は、
岩波文庫の『ファーブル昆虫記』
全部で十冊あり、
ただいま六冊目ですから、
年内中はかかってしまいそうです。
ファーブル先生がライフワークとして書いたもので、
ゆっくり悠々たる書きっぷりですから、
こちらもそれに合わせてゆっくりゆっくり。
急ぐな急ぐなよ、です。
さて、
きのうの朝読んだところに
こんなことが書いてありました。

きりぎりす類の発音器はなんの役に立つのか。私は相手を迎える時になんの役目も持たないとか、聞く方の雌にも心楽しい口説(くぜつ)の囁きをしないとか断定するつもりはない。
それは自明の証拠に逆らうことになろう。しかしその根本的な役割はそんなところにあるのではない。何よりもまず虫がそれに託しているのは生きる歓びを語ることだ。腹はくちいし、背中はお陽さまに暖めてもらっている生の楽しさを歌うためだ。証拠は太いからふとぎすとやぶきりの雄だ。婚礼がめでたく済み、二度と役に立たぬほど衰え、もう恋人など振り向く元気もないのに、弾く力が失せるまで楽しげに弦を弾きつづけている。

ファイト一発、
さあ、きょうもがんばろう! という気になりました。

・アブラゼミ腹がらんどうの響きあり  野衾