写真のリアリティ

 

・六本木春は名のみの寒さかな

六本木のZen Foto Galleryで開催されている
「瞽女 Goze 橋本照嵩写真展」に行ってきました。
四十年ぶりの新プリントによる写真展です。
展示販売もしており、
フレーム付き四万二千円の写真が十五枚、
売約済みになっていました。
ギャラリーに流れる瞽女唄の調べに身を任せながら、
一点一点ゆっくり見ていきます。
はやく見てはいけません。
ゆっくりゆっくり。
繰り返し繰り返し。
瞽女唄と響きあい、
写真に撮られた瞽女さんたちの哄笑が聴こえてくるようです。
閉店間近、
カップルの外国人が入ってき、
橋本さんに日本語で質問していました。
ほぼ四十年前に撮られた写真なのに、
それほど昔のことではないのに、
今の日本とずいぶん違うことに驚いたようです。
高度経済成長が叫ばれている時代に、
目の見えない瞽女さんたちがひっそりと
東北の村村を訪ね
弾き語りをした音と姿が、
「くさい」臭いとなって迫ってきます。
橋本さんが『瞽女』で日本写真協会新人賞を受賞したとき、
「臭ってくる」「電話帳」のような写真集と
木村伊兵衛が絶賛した
その「臭い」が、
震災後の日本の空を晴らしてくれるようです。

拙著『マハーヴァギナまたは巫山(ふざん)の夢』の書評が、
今週号の「週刊読書人」に掲載されました。
有り難し!
書評してくださったのは、
東京大学准教授・英米文学専攻の阿部公彦氏。
コチラです。

・はらはらと鞄のなかへ桜かな  野衾