夜のクジラ

 

・白梅やここ数日の日課なり

朝の二時、
トイレで用を足し、
静かに床についてから
しばらく眼を開けていると、
遠くで、
うぉーんうぉーんうぉーんうぉーん。
何の音だろう。
山の上の家なので、
風の向きによっては山下埠頭辺りからでしょうか、
ぼー、ぼー、ぼー、
と汽笛が聞こえることもありますが、
遥かな国への郷愁を誘うような
あの音とも違います。
うぉーんうぉーんうぉーんうぉーん。
うぉうぉーんうぉうぉーんうぉうぉーんうぉーん。
あれは、
夜のクジラさ。
機械仕掛けの頭をもたげ、
夜のしじまに潮を吹く。
うぉーんうぉーんうぉーんうぉーん。
うぉうぉーんうぉうぉーんうぉうぉーんうぉーん。
暴れクジラが仲間を呼ぶ声さ。

・白梅を見上げ気象を占ひぬ  野衾