文は人

 カメラマン橋本さんの写真と文章がある雑誌に連載されている。橋本さんは原稿が仕上がるとわたしのところにFAXしてくる。わたしは校正しながら入力し、意味の曖昧な箇所は電話で本人に確認する。言わんとすることが込み入っていて大変な時もあるが、丁寧にやっていると、底から太い幹や根が浮き出てくるようで面白い。橋本さんの文章には写真と同様、眼が生きて働いている。
 きのう送られてきたFAXには娘さんが幼かった頃の思い出が記されていた。のびのびと野性的に育っていた娘さんがあるとき幼稚園で描かされた絵を持って帰ってきた。黄色の太陽から黄色の光線が放射状に放たれている、よくある絵。橋本さんはそれを見て激怒した。即刻娘を外へ連れだし抱き上げ顔を両手で挟んで太陽に向けた。よく見てみろ! よく見てみろ! と叫んだ。奥さんが二人の姿を見て飛んできた。バカヤロー! 娘の目をつぶす気かあ! 眼の人橋本の面目躍如のエピソードでじーんとした。