虫も人も

 

・冬の道我れの呪文を唱へつつ

電車の中では岩波文庫の『完訳ファーブル昆虫記』
やっと三巻目に入りました。
ファーブル先生に付き合って、
気長にこつこつ読むつもり。
朝は桜木町駅で電車を降りるのですが、
段落の途中だと気持ち悪く、
ホームに立ち
切りのいいところまで読むこともあります。
それからいつものように階段を下り、
立ち食い蕎麦のお店の前で
「おはようございます」
と言えば、
すぐにおばちゃんが飛んできて、
差し出した水筒に
遠藤の青汁を入れてくれます。
家人が作ってくれた布袋に水筒を入れ
お代を払い、
それから交差する人間たちの間をぬい
エスカレーターに乗り
地下道をくぐって音楽通り方面へ。
江戸文化研究で名高い田中優子さんも通ったという
本町小学校脇の階段をゆっくり上りながら、
あ、
俺って虫みたいと
ふと感じました。
どんな感じかと言えば、
ちょっと言葉にしづらいけど。
五感と
さらに一つ足して六感といっても、
決められたことを
決められたとおりにしかできない
虫たちに似ており、
五感六感で感得できないもろもろが、
世界に満ちていないとだれが言えるだろう。
本当は
もっと凄いことが起きているのに、
つちばちがつちばちとして
疑いもなく生きるしかないように、
ほんの小さな虫メガネで
世界を見ているだけなのに、
エラそうに
にんげんさまのお通りだい
ああでもないこうでもないと、
言っているだけのような気がした。
そんな気がしたのも
ファーブル先生のおかげかもしれません。
今日もつづき。

・うず巻いてかさこそ語る枯葉かな  野衾