めめしい

 

・誕生日母の電話の冬日かな

『失われた時を求めて』九巻目突入。
いやあ、長い長い。
くどいくどい。
同棲生活に嫌気がさし(そりゃそうだろうよ)、
家を出て行った恋人のアルベルチーヌは、
落馬して木にぶつかり
死んでしまいます。
それから延々と話者の分析がつづきます。
どこまで分析すれば気がすむの、
というぐらい。
分析好きなんだなあこのひと。
いくら分析しても、
亡くなった恋人は戻ってきません。
そりゃそうだろう。
恋人が亡くなったという知らせが入ってから、
話者のところに
恋人から手紙が二通届きます。
もちろん、
亡くなる前に投函されていたわけです。
古い外国映画にもあったなあ、こんな話。
それから、
この小説では恋人は落馬して死にますが、
トルコ人で初めてのノーベル文学賞受賞者
オルハン・パムクの
『無垢の博物館』では、
恋人が運転する車が木に激突し、
恋人は死に、
話者だけ生き残りますが、
これなど『失われた時~』が下敷きではないでしょうか。
分かりませんけれど、
一つの作品を読むことは、
とくに
それが古典となっている場合、
その後の作品への影響が
多方面にあるのはふつうでしょうから、
その辺のところを想像して読む楽しみも加わって面白い、
ということは確かにあります。
が、
それにしても、
『失われた時~』
長いし、
まったくくどい男だよ!
でも、
こういうくどさって、
男にはあるよなあ。
めめしいとは「女々しい」と書くけれど、
めめしいのは、
女ではなく男だものなあ。
そのあたりのことも、
この小説を読むといやというほどよく分かります。

写真は、ひかりちゃん提供。

・うれしきはケータイメールにりなぴかな  野衾