夢―野外コンサート

 

・鳴き終へて蝉の死体のかろきかな

パンクな女性歌手二人のコンサート。
一人は戸川純。
もう一人は知らない。
広い畑みたいな
野原みたいなところを、
人がぞろぞろと。
パンフレットなんか要らなかったのに、
スッと渡され、
手に持ったら重かった。
捨てるわけにもゆかず。
草丈が臍の辺りまであり、
こんなところで本当に
コンサートが行われるのだろうかと
だんだん不安になってくる。
――もう真っ暗なのだ。
一寸先も分からない。
手探りしながら
ころばぬように進んでいたら、
私について来なさい。
その人に従いながら
ちょんびりちょんびり歩いてゆく。
そのまま進めというからそうしたら、
全身が
気持ちの悪い
湿った藪に入り、
息をするのもやっとのほどの
洞穴みたいにぬめっとし、
やべ、
と思ったら
抜けて、
からんと青空。
コンサート会場なのだった。
雨がぱらついて、
主催者側は想定外。
舞台の下に青々と水を湛えたプールがあり、
毛むくじゃらの
弁慶のような、
閻魔大王のような
いかめしい男が、
レオタード姿でゆうゆうと泳いでゆく。
平泳ぎ。
戸川純さんと
もう一人のコンサートのはずなのに、
楽屋では、
民謡歌手たちが控えている。
民謡歌手たちの親玉が、
金がなくて昼の弁当も出せないとぼやいたら、
わたしの隣りにいた若者が、
主催者側に交渉して
弁当をせしめてきてあげる、
と言った。
親玉、喜ぶ。
レオタード姿の弁慶
または閻魔大王が、
今度はこっちに泳いでくる。
なんなんだこいつは。
コンサートはまだ始まらない。

写真は、しょうこさん提供「大曲の花火」

・虫の音を游ぶこころの寂しかり  野衾

 

 

 

ツブヤ大学「BooK学科ヨコハマ講座」のお知らせ

春風社事務所を会場にして、
毎月行っているトークイベントのお知らせです。
今月は、
「1枚のポップが本の面白さを伝える」
をテーマに、
有隣堂アトレ恵比寿店に勤務する梅原潤一さんを
ゲストにお招きします。
梅原さんのポップは注目の的、脅威の的で、
「梅原ポップ」を全国に配布したり、
文面を本のオビにつかったりする出版社もあるのだとか。
まさに梅原マジック!
梅原さんがポップをつくると、
なぜ本が売れるのか、
本にかかわる人、本好きの方はもちろん、
商品をどうやってアピールすべきかを
日々考えておられる方は、
ぜひとも聞いてみたいところです。
梅原さんが書かれた
『書店ポップ術 グッドセラー死闘篇』(試論社)に、
つぎのような言葉があります。
「小説を売りたい。でも、小説は売れない。
そんな状況に、私はポップという紙1枚で立ち向かおうと思っている。」

当日は、以下の本について、
梅原さんがつくった実際のポップを見ながら、
「梅原ポップ術」についてうかがいます。
お早目のご予約をお願いします。

奥田英朗『家日和』(集英社文庫)

荻原浩『神様からひと言』(光文社文庫)

貫井徳郎『微笑む人』(実業之日本社)

春日武彦『緘黙』(新潮文庫)

椰月美智子『どんまいっ』(幻冬舎文庫)

上原隆『こんな日もあるさ 23のコラム・ノンフィクション』(文藝春秋)

角田光代『紙の月』(角川春樹事務所)

奥田英朗『我が家の問題』(集英社)

●日時 8月31日(金)午後8時~
●場所 春風社
●参加費 1000円

詳しくは、こちらをご覧ください。