日々の泡

 

・夕立に日中の汗流したる

いただいた原稿をアタマからていねいに読み、
チェックしていく作業は、
とっても地味で、
いわゆる「編集者」のイメージとは
かけ離れているのではないでしょうか。
しかし、
硬い地面を掘り起こすようなその作業のなかにも、
微かな笑いや癒し、
息抜きがないわけではありません。
たとえば、
戦前の非行少年に関する原稿で、
花島政三郎先生の文献に触れられている箇所がありました。
花島先生は、
宮城教育大学におられた方です。
その花島先生の「花」がなぜか「北」になっていました。
たしかに「花」と「北」は、字の形も似ています。
間違えたのが原稿を執筆した本人か、
依頼された入力者かは分かりませんが、
(執筆者とは考えにくく、
おそらく入力した方でしょう)
いずれにしても、
苗字に「島」が付く三郎といえば、
北島三郎!という、
その思い込みが指先を誤らせた、
に違いありません。
「北」を赤のボールペンで「花」に直しながら、
間違えて入力した、
逢ったことのない名前も知らないその方と、
コーヒーでも飲みながら、
しばし歓談した気になりました。
そんなことはだれでもやる間違いです。
目くじらを立てるほどのことではありません。

・露零し嘗めてしょっぱき左腕  野衾