カフカ

 

・獺祭に甘エビ味噌の旨さかな

仕事であれ、
プライベートであれ、
まったく気がかりなことのない日というのは、
あるのでしょうか。
カフカの三つある長編小説を読み返し、
身につまされ、
我がことのようで、
ふと、そんなことを思いました。
あの時あの人は
なんであんな言い方したのかな、
わたしの言い方のどこかいけなかったのだろうか、
(気に障ったら謝ります)
それとも
他からこちらが感知できない良からぬ情報がつたわって、
それでなんだか不機嫌そうに見えたのだろうか、
なんてことが、
つらつら気にかかることはよくあります。
他人事ではありません。
気にしなくてもいいようにも思いますが、
なにか重大な見落としか欠陥がわたしの振る舞いにあって、
それが相手の気分を損ね、
ひいてはこれから起こる悪い前兆の
しるしであるような気さえしてくる。
その意味で、
カフカはきょうのわたしにとっての小説です。
こころの弱さ、
精神の減衰に過ぎないと己を納得させるのですが、
そんなときは、
好きな詩人のように、
大空でも被って
何もしないで不貞寝したくなります。

・白服の袖揺れ祖父の香りせり  野衾