飛びこみ営業

 アポなしで、いきなり「ごめんください。わたくし、○○社の△△という者です。突然で恐縮ですが、今日は××のお話をさせていただきたくてうかがいました」というのが、いわゆる飛びこみ営業。営業の醍醐味は飛びこみ営業にあるという言われ方もする。
 以前勤めていた会社でこんなことがあった。男だったか女だったかも定かでないが(たしか女だったと思う)、会社に入ってくるなり、いきなり歌い出した者がいた。社員一同、何事かと思って飛び出し、変わった営業に目を丸くした。干物を売り付ける営業だった。丁重にお断りし、帰っていただいた。
 また、ボサボサの頭、ヨレヨレの服を着た男がフラ〜ッと入ってきたことがあった。「三浦、お前の担当だ」と社長に指示され、なんで俺? と思ったが、「はい」とだけ言って、しぶしぶ応対。人を服装で判断してはいけないが、浮浪者かと思った。ところが、四国のとある有名大学の教授で、用件は出版の相談だった。
 紅葉ヶ丘に立つビルの一室にある小社に、いわゆる「変わった営業」の人が来ることは今のところ、ない。「横浜市教育会館」のビル名が一つの敷居になっているのかもしれない。それでも個性は出る。扱う商品やサービスを採用するにしても、断るにしても、一つの出会いには変わりないのだから、気持ちよくいきたいものだ。