若さ

 

 角曲がる野毛の路地裏沈丁花

靴の中敷きを買いにABCマートへ。
階段を下りてレジへ直行。
むかし弁慶縞、格子縞、チェックなどといった、
今はなんというか知らないけれど、
とにかく縦横格子の縞のシャツを着た兄さんに、
「あのー。靴の中敷きがほしいんですけど…」
兄さん、夜の七時を過ぎているのに、
一日仕事をして疲れてもいるだろうに、
眼がキラキラしている。
「何センチですか?」
「え? あ。25センチです」
「25センチですね。少々お待ちください」
お兄さんは、レジカウンターから出てきて、
小走りして上の階へ向かう様子。
しばらくして戻ってくると、
少し息を切らしている。
「お待たせしました。こちらが革のもの。
こちらがフツーのタイプ」
「フツーのタイプのください。
でも、これ、26センチって書いてありますよ」
「あ。すみません。少々お待ちください」
お兄さん、また、タタタタッと駆け足で。
やがて戻ってくると、
「すみませんでした。はい。こちら25センチのものです」
「ありがとう。これ、ください」
というような、
なんでもないことなのですが、
チェックのシャツの兄さんの、
まったく朝のような眼の輝きに若さを感じ、
ちょっと羨ましくもなりました。

 夢なれど親しき人のこゑを聴く  野衾