ヤパリ

 

 言葉無き夜を告げ知らす薄かな

日が短くなりました。
会社を出、
新しく建ったグランドメゾンを横に見ながら、
てくてく坂を下り、
紅葉橋の手前を横に曲がって
田中優子さんも通ったという本町小学校に差しかかる頃、
歩道の反対側から二人の大柄な男性がやってきました。
大股で近寄り、
すれちがいざま、
一人がもう一人に話しかけました。
ヤパリヤテミナイトワカラナイヨネ。
「リ」と「ラ」の発音が巻き舌で、立派です。
イントネーションも独特。
単語と単語の切れ目がなく、
平らに言い切る感じ。
ヤパリヤテミナイトワカラナイヨネ。
白人。
話しかけられた無言の相手は日本人のようです。
すれちがった後、
わたしは何度も真似して言ってみました。
ヤパリヤテミナイトワカラナイヨネ。
だんだんそんな気がしてきました。
ヤパリヤテミナイトワカラナイヨネ。
本当にそうです。
やっぱり、
やってみないことには何事も分かりません。

 柿食へば歯に挟まりぬ台所