社員旅行

 

 秋風や波ひたひたと月の浦

先週二十二、二十三日と東北へ行ってきました。
前日大型の台風が通過した影響で山形新幹線が運休しましたので、
初日の計画を急遽取りやめ、
仙台駅から青葉城址、八木山橋、さらに折り返して、
東北大学を通りひたすら歩きました。
雨の中傘を差し、
一列になって黙々と。
なかなか変な社員旅行ではありました。
夜入ったお店に貼紙がしてあり、
見れば三十二年間続けてきたお店を今月たたむのだとか。
料理を追加注文するのに「おねえさん」と声をかけたら、
「お。いい響きだねえ。もう一回!」と女将さん。
わたしにとっては第二のふるさと仙台の夜が更けていきました。
二日目は仙台駅からバスで石巻へ。
写真家の橋本照嵩さんの案内で一日、
被災地を車で見て回りました。
地震、津波、火災の爪あとが生々しく残っています。
見たことのない光景が現実離れしています。
むしろ夢に近い。
これから、ここから怖い夢に変っていくぞと予感される、
そんな淡く歪んだ光景に近い気がしました。
広い地域にわたって地盤が一メートル以上沈んだ関係からか、
海も川も、陸に対して水位が高く、
この世の光景とも思えません。
ガイド役の橋本さんが口にした、
自然は自ずから自分の遊び場を作っている、
の言葉を噛みしめました。

 かもめ飛ぶ空かたぶきて秋の風