処と處

 

 空中に止まりて去りし蜻蛉かな

暑さがやむことを処暑(しょしょ)というそうです。
知りませんでした。
「二十四気の一。立秋の次、白露の前にくる時季。八月二十三日ごろ。」
わたしの持っている『角川漢和中辞典』の記載。
「処」の字義の六番目に「おさめる」とありますから、
この意味で使っているのでしょう。
たしかに、
ちょっと前までの狂った暑さに比べれば、
この頃は少し収まり、
朝夕、だんだんと冷気が加わってくるようです。
処暑。覚えました。
ところでこの「処」ですが、
角川さんに「几に腰掛けている足(夂)のさまをしめす」とあります。
また、「處はそれに音符虎を加えたもの」とも。
ところが、白川静さんの『字統』で「処」を引くと、
「旧字は處に作り、虎と几とに従う。虎形のものが几(腰かけ)にかけている形。
虎はおそらく虎皮を被って、戯劇などの神事的な所作を演ずるものであろう」
とあり、
角川さんと共通の〔説文〕を紹介しつつ、
金文の字形はすべて處に作り、處が正形であると。
以上、専門的な両者の説明を、
単純なわたしの頭でバッサリやると、
角川さんが「処」が主で「處」が従であるとするのに対し、
白川さんは、いやいや、「處」が主で「処」が従であるよと。
ふむ。なるほど。
詳しいことはともかく、字って面白い!

写真は、ひかりちゃん提供。

 鬼やんま出でて話を忘れけり