睦子さんのこと

 

 一月も残り五日となりにけり

先日温美さんといっしょに訪ねてきてくれた睦子さんは、
中学一年の同級生。席が隣同士でした。
あの頃、
我が井川中学校は、
「主体的学習」のスローガンの下、
成果を上げるべく、
先生も生徒も熱心に教育実践に取り組んでいました。
授業が始まる前、
グループごとにたたみ半畳ぐらいの大きさのボードに、
予習してきたことの内容を書いたり、
ノートの使い方まで決められていました。
ノートは、予習で一ページ、授業で一ページ使います。
予習したことが一ページに収まらないときはどうするか?
別の用紙に書いて、ノリで貼ります。
あるとき、
わたしは頑張って予習し、
先生が回ってきたのに合わせノートを開き、
パタパタパタとそのページを伸ばして見せました。
たしか国語だったと思います。
先生は、「お!」と言って、バン!とハンコを捺してくれます。
そんなことでも、うれしくて、勉強に精が出ました。
授業の終りにまた課題(「宿題」と言わずに「課題」と言っていました)
が出ました。
先生に褒められたことで気をよくし、
次の国語の授業でわたしは、
四枚の追加ページを貼ったノートを開きました。
先生は、また「お!」と言ってハンコを捺してくれました。
すると、隣の席の睦子さんがおもむろにノートを開き、
パタパタパタパタパタ。
なんと五枚の追加ページが貼ってあるではありませんか。
先生、「おお!!」
むむ。ぐやぢ~!! 競争心に火がつきました。
次の授業に、
わたしは七枚の追加ページを貼って臨みました。
睦子さんは六枚でした。
むふふふふ。どうだ!
ところが、その次の授業で睦子さんのノートには、
大台の十枚の追加ページが貼ってあり、
伸ばすと相当な長さになって、
クラス中がやんやの大騒ぎになりました。
わたしの闘争心はさらに燃え上がり、
次の授業に、十二枚の追加ページを貼って臨みました。
これは相当です。
脂汗を掻きながら、
パタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタ。
「少し、字がでかぐねーが?」と先生。
ハッとするわたし。
ページをかせぐために無意識のうちに、
字が少々でかくなってしまったようです。
それからは、字がでかくならないように気をつけ、
予習したことを書き、
最長十六枚の紙を貼ったことがありました。
睦子さんといえば、
いつもそのことを思い出します。
正直、疲れました。睦子さんもきっとそうだったと思います。
あれって、身になっていたんですかね~。
一年が終ってブワブワに嵩張ったあのノート、
どうしたのだったか、さっぱり覚えていません。

 寒々と出版統計眺めをり

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