横は浜

 小社情報誌「春風倶楽部」第11号の特集は「横浜」。土地の名は、地誌とは別に、人それぞれ特別の意味があるのだろう。それをお聞きしたい。昨日、原稿依頼文の発送を終えた。
 会社を起こすとき、横浜にしようかどうしようか少しは考えたが、いきなり事務所を借りるよりも、まだこの先どうなるのか分からないのだから、とりあえず、わたしの自宅でいいではないかということで仲間を説得、あまり深くも考えず、今日に至っている。が、5周年が過ぎ、6年目に入り、そうとばかりも言っていられなくなった。
 わたしが住んでいる山のふもとには、かつて遊郭があったそうで、なにやら因縁話もあるというから怖くなり、山の上もそうなのかと人に訊いたら、因縁話もなにも、あそこはつい先だってまでけもの道で、ひとが住んでいないのだから、そんなのあるわけございません、とのことで拍子抜けした。
 会社のある桜木町紅葉ヶ丘には奉行所跡がある。かつてはここから浜を訪れる船の帆が見えただろうか。絹に関係した歴史がこの街の構図をつくったのだろう。きょう行く船木歯科のすぐ近くにはシルクセンターがある。まだ入ったことはない。眼がだんだん足下を向くようになった。われながら喜ばしいことだと思う。小中学校時代、暗記するだけの地理が大の苦手、嫌いでもあったから。