キズとしての文字

 

 寒さつひつひさびさびと国なまり

活版印刷による文字をじっとみていたら、
紙につけられたキズのように見えてきました。
木につけられたキズから滴る樹液は、香油とよばれ、
ひとのいのちを癒してくれたり、
まずなによりも神への捧げものであったのだとか。
印刷技術を発明したグーテンベルクが聖書を印刷したのが1455年。
550年の時を経て、いま、
活版印刷が世界から消えようとしています。
消えてなくなるものを惜しんでも仕方ありませんが、
グーテンベルクが活版印刷に込めた意味をときどきは思い出し、
刻印された文字から滴る樹液を本からいただいていることを
忘れないようにしたいと思います。

 寒空やサラリーマンの襟のキズ

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