晩夏

 

日中歩いていると
蟬がしきりに鳴いていて、
いよいよ夏の終りと感じますが、
仕事を終えて保土ヶ谷駅から自宅へ向かう道々、
相変らず蟬は鳴いているとはいうものの、
同時に、
蟬ではない、
秋の虫の声が聴こえてきます。
蟬の声と秋の虫の声が入れ替わるちょうど境の日だったのでしょう。
数年前、
佐々木幹郎さんの山小屋を訪ねたとき、
道々クルマを運転しながら、
幹郎さん、
ほんとうに紅葉がきれいなのは一日だけ
という話をされ、
一日だけですか? と
きき返したことを覚えています。
きのう、
蟬の声と虫の声が同時に聴こえてくるときに遭遇し、
一日ともいえない時のめぐりに感じ入り、
シジンのことばを思い出しました。

 

・緑蔭や閑(しずか)の水に釣りの糸  野衾