ふわっふわ

 

食パンのことではありません。
本町小学校よこの階段を上って横断歩道を渡ろうとしたとき、
反対側から、
文庫本の読みさしのページに右手の親指をはさみ
あるいてくる男性がありました。
おどろいたのは、
持っていたその本が異様にふくらんでいたこと。
風呂につかりながら読んでいて
うっかり湯のなかに落としたかな。
あるいは雨にやられたか。
はたまた、
1ページづつくちゃくちゃにし、
それを全ページにほどこしたとか。
そんなことをあえてするひとはいないか。
いないよな。
いや、わからんぞ…
まあそんな感じで
ふわっふわにふくらんでいる文庫本に目が奪われたのでした。
ひと月ほど前のことです。
さて、おととい、
紅葉坂の交差点であの男性とすれ違いました。
前回同様、
読みさしページに右手の親指をはさみながら文庫本を携えています。
その本の状態はといえば、
やはりふわっふわ。
まえに見たときと同じ本なのか、
べつの本なのかまでは分かりませんでした。
もしべつの本だとすれば、
ふわっふわの状態にした本を読むのが好きなひと
なのかもしれません。
んー、
ミステリアス!

 

・いさぎよき天(あめ)の下なる五月かな  野衾