本のにおい

 

休日、ロフティングの『ドリトル先生アフリカゆき』を
たのしく読みました。
シリーズ十二冊を古書で求めていたのですが、
会社の机の横に置いたまま
つん読状態になっていました。
プロイスラーの
『大どろぼうホッツェンプロッツ』が面白かったので、
つぎ
なににしようかと考えあぐねていたところ、
ふと思い出しました。
挿絵とあいまって、
ものがたりに流れている空気感がたまりません。
わたしが読んだのは、
昭和四十三年十月五日、第十七刷のもので、
いまから五十一年前。
当時のわたしはといえば、
こういう本にとんと縁がありませんでした。
弟と外で遊ぶことに忙しかった。
本をひらくと、
ほんのりかわいた秋のにおいがします。
祖父母の部屋の畳のような、
祖父の枕のような、
作業場に積まれた藁のような、
夏の草のような、
とてもとてもなつかしいにおいです。
あと十一冊ありますから、
ゆっくり読みたいと思います。

 

・ふるさとの古家の軒も梅の花  野衾