駅蕎麦

 

・春の浜利休鼠の雨に酔ふ

かき揚げ蕎麦が食べたくなり、
角のカウンターに向かい
そろそろ食べ終えようとしていたとき、
四十代後半か、
あるいは五十代、
ひとりの女性が店に入ってくるなり、
「スイカと現金の併用はできないんでしょうか?」
と言った。
年配の女性店員は、
「併用はできないんですよう」
「そうですか…」
「いくらお持ちなんですか?」
「…………」
「何を食べたいんですか?」
「スイカと現金を合わせると350円払えるなあと思って…。
前から食べたいなぁと思っていたもので…」
寂しそうに出ていこうとする女性を追いかけ
店の横のドアを開け出て行った女性店員は、
チケットの自販機を鍵で開け、
何やら操作し始めた。
と、
先ほどの女性が嬉しそうに戻ってきて、
カウンター中央に向かい
ちょこなんと椅子に腰かけた。
わたしはグラス一杯の水を飲み干し店を出た。

・結界の行きはよいよい霞かな  野衾

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三浦衛(みうら・まもる) 春風社代表にして自慢大王&悪ノリ大王。体調のいいときは自らを天才と称し、不調の折はちりあくたにも劣るヤツとしょんぼり。

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三浦衛の本


『カメレオン』
 三人ときどき声にならぬ声を洩らし/とろけ とろけ 唾までとばし/クヂるとナメるとネヂるとチョす…(「鳶」) 自在に色を変え、不意に突き刺さる、軽妙なことばの戯れ。秋田方言満載の詩集。本文は金属活字による活版印刷。


『マハーヴァギナまたは巫山の夢』
 三平佐世夫は、千一夜の夢うつつで女と戯れ、印度に旅し、睾丸を抜かれ、鰐を飼い、横浜を彷徨う。言語の崖っぷちを綱渡りする、めくるめく冒険。本文活版印刷に美麗造本を施した平成の大奇書。


『父のふるさと』
 父の目に映じた故郷の風土、ひと、くらし、農事を、愛惜をこめ描きだす。本文は金属活字による活版印刷。「身と蓋函」に納める。


『出版は風まかせ』
 横浜の出版社「春風社」社長が本づくりと会社経営にまつわるエピソードを豊富におりまぜ、創業から10年を振り返る。