香料

 

・見下ろして桜ぽつぽつ掃部山

街を歩いていていまいちばん困るのは匂い。
体調を崩してからいろいろ変化があり、
匂いに敏感、
というか、
過敏になったのがそのひとつ。
体調は旧に復しつつあるのに、
匂いだけは鼻についてたまりません。
とくに、
女性の髪の匂いと、
洗剤の匂いにやられます。
自然の花の匂いに似せて作られた匂いなのでしょうが、
どうしたってそれは似て非なるもの。
とは言い条、
まさか見も知らぬ女性に向かって
文句を言うわけにもいかず、
だまって遠ざかるようにしています。
昨夜、
疲れた体を引きずり
自宅近くの階段を上っていたとき、
不意にあの洗剤の臭いが鼻腔を刺激し、
街全体が、
地球を取り巻く大気全部が
香料に覆われている錯覚にとらわれ、
クラクラッとなりました。

・はるうららすることなきをしてゐたし  野衾