知多半島

 

・ブレス切れ転がり帰る春の海

十年にはなりませんが、
それにほどちかく、
知多半島に宿をとったことがありました。
病を得て、
七転八倒の末、
ようやく快方へ向かうか
と思われた時期で、
わたしは家人とふたり、
朝の爽快な気を吸うべく、
浜辺に下りゆっくり気功を始めたのでした。
と、
ぷちっと音がし、
目を開けると、
スギライトのブレスレットの糸が切れ、
紫色の石が砂浜に散らばりました。
白い砂の上に紫の小さな石たち。
拾おうとすれば
拾えたのですが、
ぱあっと散った紫色の石たちを見ているうちに、
そうか帰りたいのか、
と思われ、
海の水に引かれていくままにしました。
ときどき思い出します。

・三々五々公民館の春うらら  野衾