著者恚る!

 

・凩や烏を墜とす布(きれ)のごと

まえに紹介した阿部筲人(あべ・しょうじん)
『俳句 四合目からの出発』(講談社学術文庫)
ですが、
こんなのはダメだと阿部さんが考える句が
ふんだんに取り上げられており、
なるほどなるほどで
たいへん参考になります。
わたしの句も
阿部さんに見せたら木端微塵でしょう。
ところで阿部さん、
ダメ句を紹介しているうちに、
だんだん興奮してきて、
ついに恚りまくった。

「【恋愛俳句】明らかに戦後の現象では、
大っぴらに「愛だ・恋だ」とやることです。だがこの点、戦後派はだめです。
サッカリン的観念語で、ゴム風船ほどの内容もありません。
これを聞いて読者の胸が波立つとしたら、何ともいえない浅薄現象です。
近来の歌謡曲の、さかりのついた犬猫のごとき現象に、
俳句作家が毒されてはなりません。

○水仙にある「純愛」よアイシャドウ

何ですか、これは。言葉だけを知っている痴呆俳句です。
アイシャドウを施した化猫(ばけねこ)のような純愛がありますか」

アハハハ…
阿部さん、そうとう恚っている。
書き言葉から話し言葉になってるもん。
痴呆俳句って。
本人が真剣なればこそ、
読んでるこっちは笑えます。

・凩や黒き雲裂き光来る  野衾