ブッダのことば

 

・石畳黄落の音なかりけり

「犀の角のようにただ独り歩め」で有名な
『ブッダのことば スッタニパータ』(中村元訳、岩波文庫)ですが、
その944番は、
「古いものを喜んではならない。
また新しいものに魅惑されてはならない。
滅びゆくものを悲しんではならない。
牽引する者(妄執)にとらわれてはならない」
仏教教団が成立する前のブッダの言葉は、
すっきりしていて
実に分かりやすいのですが、
驚くのは、
この言葉についての中村の注。
「すべては移り行くということの認識にもとづいて、
現実に即した柔軟性に富んだ実践倫理が成立するのである。
人生の指針として、こんなすばらしいことばがまたとあるだろうか!」
注に感嘆符が用いられているところに、
なみなみならぬ中村元の感動があふれているようです。
さらにつづく文章もすばらしく、
全文引用したいぐらい。
ですが、
23行もあるので止めにします。
こういう基本的な学術的翻訳書にこめられた訳者の
感動に感動します。

・草の花名を知らぬ吾れ立ちんぼう  野衾