閒村俊一句集

 

・やはらかく土沈みけり山の秋

閒村俊一さんの句集、
『鶴の鬱』『拔辨天』を読む。
いいなあと思った句を
まず『鶴の鬱』から、

○二人目ものつぺらぼうなり土手の雪

(「雪」は、下がヨの真ん中の横棒が貫く旧字体)

『拔辨天』から、

○蘊蓄に溺るゝ秋の蠅二匹

○あまのがはぶちまけられし雜魚(ざこ)の腸(わた)

○炎天の鷄(とり)くびられしまゝ步く

○秋時雨遺稿詩集に正誤表

(遺稿の「遺」のしんにょうは、点ひとつでなくふたつの旧字体)

○稻妻や姉から先にする二階

○蟲の秋深くもならぬ仲のまゝ

○喉鳴らす猫とをんなと夏の風邪

濃密、繊細、
ミステリアスでエロチックな、
こんな楽しい句集は初めて。
旧字旧かな活版印刷が、
句の味をさらに盛り立てているようです。
そんな閒村さんから、
『マハーヴァギナまたは巫山の夢』

今回の『カメレオン』

装丁していただきました。

・秋の蚊をつれて息吐く峠かな  野衾