図書館は便利!

 火葬場の煙り立ち消ゆ冬の月
 出版人でありながら、学術図書出版社の社長でありながら、いつも全国の図書館様のお世話になっているにもかかわらず、社員には、図書館へ行って借りてくればいいじゃないか、県立図書館だって市の中央図書館だって目と鼻の先にあるじゃないか、すぐに行って借りて来い!(そんな命令口調ではありませんが)なんて言っているのに、お恥ずかしい話、わたしは個人的にあまり図書館を利用したことがない。すまない。子供の時からそうだった。人から物を借りることを潔しとしない、なんとなく。とくべつの理由はない。ただなんとなく。借りたとなると、返すまで、気になって気になってしょうがないのだ。地下鉄の電車をどこからどんな風に入れたのか、気になって夜も寝られないという漫才ネタがあったが、まさにあんな感じ。
 先週、仕事上の必要があって、ジャック・プルーストの『フランス百科全書絵引』を横浜市の中央図書館に借りに行った。大型本で片手で持ち上がらないぐらいの重さ。館外貸し出しはしていないという。だろうなあ。その足で県立図書館へ。所蔵しているものの、やはりこちらも館外貸し出し禁止。ただ、係の女性が、神奈川県内の他の図書館を調べてくれ、館外貸し出しを許している館もあると教えてくれた。ここで手続きをするよりも、市の中央図書館に連絡したほうが届くのが早いと思いますよ…。
 社に戻り、市の中央図書館に電話をし、その旨伝え、他の館からの貸し出しを予約。
 翌日、電話して、入ったかどうかを確認したら、まだだという。また電話します、と言って切ろうとしたら、パソコンをお使いですかと訊かれたので、はい、使っています。それでしたら、こちらのホームページを開いてパスワードを登録されますと、予約本の入荷状況がパソコンでご確認できますが…。
 というわけで、さっそくパスワードを入力した。「ただいま準備中です」のメッセージが出た。なるほどねー。いちいち電話しなくても分かるわけか。
 一時間ほどして、再びホームページに入りパスワードを入力、予約状況を確かめると、「準備ができました」とメッセージが替わっている。ふーん。なるほど。便利なものだ。
 いそいそと中央図書館に出向き、件の本を借り出した。歩きながら考えた。そか。図書館がこんなに便利なら、しかも歩いて1、2分のところにあるのだから、利用しない手はない! よーし。こうなりゃ、家にある本をぜーーーーーんぶ売っぱらって、本はすべて図書館から借りることにしようかな。そうだそうだそうしよう。家も広くなるし、売ったお金でまたオーディオを買い替えられるし…。そうだそうだそうしようそうしようったらそうしよう。
 なんてね。こういう気分の変り方が、後先考えぬ単純な変り方が、わたしの一番いけないところ。分かってはいるのだが。
 ところで、図書館がこんなに便利だっちゅう(古!)ことは、県内の図書館の蔵書がこんなに便利に借り出せるということは、本は買わずに借りるもの、と考えるのもうなずける。出版社としては考え物だ。
 物言えば唇寒いぜバカ総理

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