奥邃先生の面影と談話及遺訓

 

・水遣りへ時代時代と言ひて父

古書で割りと安くでていたので求めました。
『奥邃先生の面影と談話及遺訓』
昭和九年、
奥邃廣録刊行会発行の本。
初めて読んだのは、
以前勤めていた会社で『奥邃廣録』の復刻版をだす際でしたから、
二十九年前ということになります。
二十九年といえば奥邃がアメリカで暮らした時間。
本書にも登場する洋画家・柳敬助のご子息
文治郎さんからお借りした本だったと記憶しています。
ちなみに記憶の「憶」の字、
吉川幸次郎によれば、
「心」がふたつ入っていることにより、
深く思うことが原義なのだとか。
深く思うから記憶されるということでしょうか。
ともかく、
ぱらぱらめくっていると、
正確にではありませんが、
そこに記されてあるエピソードを
けっこう覚えていて、
初めて読んだときの衝撃がよみがえってきます。
著者の永島忠重さんは
「はしがき」で、
次のようにいっています。
「私は未だ曾て此の人の生活の如くに充実した生活を見た事がなく、
また此の人の言葉の如くに権威ある言葉を聴いた事がない。」
奥邃のことばに初めて触れ、
すこしでも近づきたいと願った気持ちは、
今も変りなく、
これからも変らないでしょう。

・馬冷やし艸いよいよ青くなる  野衾