肛門科

 

・燈下親し睡魔来るや転落譚

いまはすっかりよくなりましたが、
四十代のころ痔病に悩まされ、
新聞広告で見かける高価な薬を試したり、
名医と称される医者を肛門、
いや訪問、
あはははは…
したこともたびたび。
本も出している銀座の名医を訪ねたら、
肛門がたとえていうなら
古いゴムホースのような状態で、
手術すれば、
元の若々しい肛門になりますよとおだてられ、
その気になったのですが、
八王子の気功の先生に相談したところ、
気が滞るから
絶対やってはいけませんと忠告され、
手術をキャンセル。
電話でキャンセルしてもよかったのですが、
またいつ世話になるかも知れず、
断るためだけにわざわざ出向きました。
待合室できれいな和服の女性がいて、
ああ、
このひとも
あの医者の前で肛門をさらすのかと思ったら、
可愛そうになりました。
だってあの医者、
口の周りに髭が生えていて、
それも剛毛で、
かつて流行ったタカアンドトシの「欧米か」にならっていえば、
「肛門か」と言いながら
頭をはたきたくなりましたから。
いくら肛門科の先生だからといって、
口の周りを肛門にみたてなくてもいいじゃないか。
さて、わたしの持病の痔病、
なぜ治ったかといえば、
気功のせいですかね。
青汁のせいですかね。
とにかく治ってよかった。
手術しなくてよかった。
あの和服の女性、どうなったかな?

・身に沁むや遥か知りたる屋の灯り  野衾