お盆の弟

 

・日暮らして疲れを忘る土瓶蒸し

大崎章監督の『お盆の弟』を観に
黄金町にあるシネマ・ジャック&ベティへ。
大腸がんを患い手術した独身の兄の面倒を見に帰った弟は、
『キャッチボール屋』をつくって以来、
しばらく新作を発表していない。
そんなところから話は始まります。
『キャッチボール屋』は、
二〇〇六年に発表された大崎監督の実際の映画。
そうです。
この映画は、
大崎監督の自伝的要素が少なくありません。
ていうか、
かなり多そう。
JR保土ヶ谷駅から徒歩一分、
国道一号線沿いにある
ビストロ・グランブルーで
監督とたまに会い、
あいさつを交わし話したこともあります。
何度目かのロケを終った日に監督が店に現れ、
嬉しそうにしていたことも思い出します。
どんな映画かと
興味津々で黄金町まで歩きましたが、
コミカルなタッチながら、
考えさせられたり、
ほろりとさせられたり、
今の時代の空気をうまく切り取っていて、
じつにおもしろい映画でした。
エンドロールに、
ロケを行った土地の方々の名前が出ていましたが、
それが映画のタッチによくマッチし、
おかげさまでこうして映画ができましたと、
うれしい気持ちが表れているようで、
観ているこちらまでうれしくなりました。
どこにでもありそうな
現代の風俗を切り取りながら、
人情の通い合う、
またその限界を描き
普遍に向かおうとする志向において、
全編モノクロであることが
功を奏しているとも感じました。
シネマ・ジャック&ベティで十月九日(金)までやっています。

・エビぎんなん三つ葉マツタケ土瓶蒸し  野衾